ワークショップを始める(3)

パソコン技術を生かす

特に深い理由は無いのに、難しそう、自分には苦手、興味を抱けないなどと勝手に思い込んでしまったものってありませんか。私にとってパソコンを含めIT関連のものがそれでした。Suicaを使い始めたのは約10年前、携帯には長年見向きもせず、3年前に購入したスマホは当初使うことなく室内の隅でころがっていました。そんな私の意識が大きく変わったのは海外での出来事からでした。

パリでは個人のお宅にお呼ばれするとアパート(いわゆる日本のマンション)内のご自宅の部屋まで自分で行くのが当然のようです。まずはアパートの入り口で事前に知らされているコード番号を押して建物に入り、次に住民リストから訪問先を選んでキーを押すとドアが開きそこでエレベーターを探して部屋階に上がります。手順を間違えると目的地に着けません。

ある時、招待して下さったお宅の住所が15bis とあったので、15番地の建物を見つけ、入り口でコード番号を押しましたがドアが開きません。bisがついていると、その隣の建物になるというのを、事前に教えてもらっていなかったのです。その時は、運よくbisのアパートから出てきた居住者が声をかけて下さったお陰で事なきを得ましたが、こうしたことが起こると電話やメールを使えないのは非常に不便なのが身に染みます。

そこで日本で購入したスマホを現地で携帯ショップに持参しSIMカードを入れ替えてもらうことを考えました。しかしそれを試みた最初の年はスマホの言語を英語かフランス語に自分で変えられずに、カード入れ替えを断られてしまいました。そして2回目の試みをした昨年、イギリス、フランスそれぞれの国でうまく交換できて、人と会う約束をしても不安はなくなり、おまけに知りたい情報はどこでも簡単に入手できるは、LINEで日本へ無料電話できるは…など、スマホは完全に私の離れがたい旅友になったのでした。

エジンバラでフェスティバルを楽しんでいた昨年の夏のことです。イギリスの大学で長年日本語を教えているという日本人女性と知り合い、素敵なホテルでアフターヌーンティーをご一緒しながらのおしゃべりの中で、私は仕掛けのある紙芝居を使って日本の昔話を海外で紹介した話をしました。すると彼女は即座に「パワーポイントを使えばそうした仕掛けは簡単にできる」と言い放ったのです。彼女によると、英国では小学生から学校でその技術を学んでいるそうでした。以前に公開講座を頻繁に開催していた頃、様々なアイデアを考え、時間をかけて作り上げていた仕掛け紙芝居。それがパソコンを使えばいとも簡単にできる。それは私にとって大きな衝撃でした。帰国したらパワーポイントを習おう、その時決心しました。

近所のパソコン教室に「パワーポイントを習うのが目的」で入会し、カリキュラムのパワーポイントから始めました。先生によるとカリキュラムの中ではそれは最後の方にある授業で、そこから始める人は今までいなかったそうです。週に2日通い、結論から言うとパワーポイントでは私が作成していた紙芝居と同様のものはできないのが分かり、逆にほっとしました。エクセルなどを含め既定のカリキュラムを終了しましたが、個人レッスンで自分の興味のあることを中心にしてパソコン学習を続けることにしました。パソコンは奥が深いし、学びをやめてしまったらこれまでの知識もすぐ忘れてしまう不安があったからです。

11月からワークショップを始めましたが、そのチラシやプレゼンで見せる内容、配布する教案なども自分で作成できるようになりました。IT分野は得意という領域にはまだまだ程遠い現状ですが、少なくとも苦手意識は消えました。やはりそれができると、できないとでは自分の世界が大きく異なるのを実体験できたのが、意識改革につながったのです。外国語の習得と同様、何かを上達させたいと願ったらそれを使わざるを得ない状況に身を置くのが何よりの早道かと実感しています。