パリ生活 ③

ネットで加速したフランス語学習

「~はどこですか」「~が欲しいです」くらいの文章しか言えなかったのが、いくらか会話ができるようになってパリに滞在すると、明らかに現地の人の反応が違うのに気づきました。

例えば道を尋ねた時。以前ですと、たどたどしく「パルドン、美術館はどこですか」と話しかけるとジェスチャー付きで「まっすぐ行って右に曲がって」と簡単に答えるか単に方角を指さしてくれるくらいでしたが「ボンジュール、ムッシュー(マダム)、~美術館に行きたいので探しているのですが」といくらか滑らかになったフランス語で尋ねると、道順を細かく教えてくれると同時に相手が男性ですと会話の端々にマダムという言葉が何度も入ってくるのです。扱われ方がより丁寧になったという印象を受けました。更に2~3の文章を加えたりすると「フランス語うまいね」と褒めてくれる人もいます。英語を話す外国人旅行者は多くても、フランス語になるとずっと少なくなるので、できると思われる評価基準がぐんと低くなるのでしょう。英語に比べるとフランス語は自分にはおまけの言語のようなものでしたが、ちょっとした会話から楽しい体験が増えるのを知ると、ある程度は話せるようになりたいと思うようになってきました。

フランス語をまじめにやってみようかと思い始めた2016年の夏、パリで外国語の参考書専門店を見つけ、何か参考になるものをと探していると、どの本にもA1~C2の記号がついているのに気づきました。これはCEFR(セファール)という評価方法で、外国語の熟達度をA1, A2, B1, B2, C1, C2の6レベルに分けたもので、もっとも初心者用がA1です。まずはA1の本を数冊購入しそれを使って学習しつつ、帰国後に東京の語学学校の通信教育を6か月受講しました。そのカリキュラムではスカイプを使って講師と月に1時間の会話ができ、一人の講師にいろいろな日本文化を英語で紹介できると話したことから9月に彼女が夏休み休暇でホームタウンのボージョレに帰国した際、そこで予定している彼女のグループ主催の日本紹介イベントを手伝うことになりました。

そんな流れから、2017年の夏にパリに滞在した際は、ボージョレに行く前にフランス語を高めておいた方が良いかと語学学校に通うことにしました。フランス語の語学学校には遠い昔の20代、ヨーロッパを放浪した時にヴィッシーという地方の街を訪れホームステイしながら2か月通ったことがあります。ABCから始める入門の次のクラスに入ったと思うのですが、授業では様々な状況に沿った音声付きのスライドを数枚見せられ、テキストは一切渡されずその時間内にすべて暗記するという極めて厳しいものでした。ただ、そうした授業を毎日5時間受けていると、確かに力はついて2か月後は旅行をしてもさほど困らないほど話せるようになっていました。

当時学んだフランス語の知識はすっかり消えていましたが、語学学校に通うとあの頃のようにかなり力はつくだろうと期待したのです。しかしパリの語学学校は私には期待外れでした。 語学学校は週単位で生徒を受け入れるので、新入生は月曜日から登校します。初日に先生がクラスで新入生達にした最初の問いかけは「あなたは何歳ですか」でした。クラスは初級の筈なのに、すでに半年から1年パリに滞在している生徒もいて、生徒間の単語力に格差があるうえに、先生は慣れていないのか教え方が下手でした。2週間通ったところで見切りをつけ、参考のために別の学校に1週間通いました。

2校目はお洒落な地域にある学校。一校目に比べると先生の教え方はプロでした。ただ、夏休みを利用して受講している中学生もいたり、生徒間のフランス語力にかなりの幅があったりで、3名ずつのグループに分かれて「パリを訪れる観光客に一押しの場所を宣伝する」などメンバーと話し合って発表する授業では、戸惑いを感じました。

そうした中、ネット検索から多くの人が効果的な学習方法と推薦しているBabbel を見つけ、70€(ユーロ,約8500円)払って1年間受講しました。 これはネット学習ですが、自分でやりたい項目を選び、隙間時間に好きなだけやっていられるので私にはとても便利でした。 何度も繰り返し学習した後で、韓国人の英語の先生からDuolingoを教えてもらいました。 こちらは無料でBabbelと同じようにいろいろな言語をネットで学べます。 この2つのネット学習をほぼ毎日続けているとA1~A2の文法的な知識が系統だって頭に入ってきました。 そこで2018年の11月に試しに仏検の準2級を受験すると合格したので、翌年の6月に2級の1次に挑戦、それが受かって2次の面接をパリで行い合格できました。 ネット学習を見つけなかったら、仏検受験など考えることもなかったでしょう。

France24(フランスのニュース番組)、NHKWORLD-JAPANは様々な言語でネット視聴ができます。Preplyはスカイプを使って1時間千円位からの料金で、海外のチューター(講師)と会話レッスンができるシステム。フランス語の会話があまりできない時に利用したら、チューターの会話の速度についていけなくて1時間が非常に長く感じられました。英語のチューターでレビュー評価がダントツに高い男性がいたので受講してみると、生徒の英語力や目標に合わせたテキストを使い、与えられたテーマでエッセーを書くと添削までしてくれて感動モノでした。時間当たり2500円程度でしたが、東京でこれ程の個人レッスンを受けたら倍以上の料金になるかと思います。


こうした体験から探せばお金もかからずに学ぶ方法がいろいろあるのを知りました。 語学の上達は効率的なやり方で毎日いくらかでも学ぶようにすること、楽しみながらできる方法を見つけることが大切かと私は感じます。パリで小津安二郎監督の映画を見たら音声が日本語で字幕にフランス語が出て、その表現が簡潔にされていてとても参考になりました。 英語音声でフランス語字幕、フランス語音声でフランス語字幕などは理解がさらに難しくなりますが、一つの学習方法として今後はDV活用を積極的にしていこうと思います。 2019年の8月にパリに滞在していた際に、近くの図書館で折り紙ワークショップが開催されているのを知り、出向いて参加すると同時に何点か教えることもできました。 「しゃれたレストランに一人で入りコースを注文する」「美術館に行きスタッフに質問する」など自分なりにフランス語が上達していく過程で、達成目標をいろいろ設定してきましたが、目に見えて上達が実感できる楽しい目標をあれこれ考えていくと、外国語を学ぶ楽しさも倍増するのではないでしょうか。

近くの図書館でのワークショップに参加