苦手な面はアイデアで

〜不人気な昔話が大変身〜

アメリカの学校で日本文化を紹介する親善大使を派遣していた頃、2週間おきに活動報告書が送られてきました。それを読むと、人気のある授業とそうでないものが良く分かります。当初、最も人気のないものは昔話でした。既成の紙芝居を英訳して読み聞かせていた人がほとんどでしたが、子供たちが退屈して聞いていないという感想が目立ちます。お手上げ状態と感じた親善大使は昔話の授業を止めてしまったり、読み聞かせ専門の先生に代わって話してもらうようになりました。

渡米前には事前研修として毎月勉強会を開催。私は皆さんの参考になるように、毎回いくつかのデモンストレーションをやっていたのですが、最初の頃はカタカナ英語で発音に自信が無いため、昔話のパフォーマンスは意図的に避けていました。しかし、昔話が授業としてほとんど成り立たないのを知り、私は初めて自分だったらどのように昔話をやるだろうかその紹介法を真剣に考えるようになったのです。

何故昔話はアメリカの生徒に人気が無いのだろうか。その理由を自分なりに考えると

    1. 黙って聞いている授業に慣れていない米国の生徒に既成の紙芝居では長すぎる
    2. 日本人の発音に生徒は慣れていないので聞き取りにくい、又は英訳が分かりにくかったり声が小さい。


その対処法として思いついたのは

    1. 話の長さを暗記できるくらいに短く簡単な表現でまとめる。
    2. 紙芝居なら枚数を極力減らし、紙面上でものが動いたり消えたりする工夫をする。
    3. 会話体の部分を増やし、語りに抑揚をつける。
    4. 生徒への問いかけを加える。

私が考案した昔話は、のちに私の公開講座を見学された新聞記者が「立体仕掛け紙芝居」と名付けて紙上で紹介して下さいました。ネズミの嫁入り、七夕物語、泣いた赤鬼、猿かに合戦、傘地蔵、桃太郎、分福茶釜、舌切り雀、竹取物語、一寸法師、花咲か爺さん、鶴の恩返しなど、を作りましたが、暗記してやってみると子供達の表情から関心の度合いが図れるし、心の余裕から質問を適当に加えたりもできます。竹取物語では冒頭に古典の語りを加えたり、ネズミの嫁入りでは途中で、日本語で歌も交えたりと、実際に作り始めてみるといろいろなアイデアが浮かんで、創作の楽しさを感じることができました。勉強会で私が昔話を頻繁に取り上げるようになって、親善大使の人達も独創的な昔話づくりに挑戦するようになりました。こうして私達自身が昔話を楽しくやれるようになると、昔話は生徒から喜ばれる授業の一つとなっていたのです。英語の発音がきれいでなくても、大きな声でやれば工夫された昔話はしっかり生徒たちの心をとらえたのでした。

昔話の紹介法を考案する中で、苦手な面はアイデアで工夫すれば乗り越えられること、そしてこの考え方は昔話に限らず人生のいろいろな場面でも応用できることを学びました。昔話に関しては学校以外でも、日本文化を紹介しながら米国東部をひとりで3か月旅した時に、プロのストーリーテラーのお宅にたまたま宿泊して、お互いのパフォーマンスを見せあって意見交換をした楽しい思い出があります。

タヌキが綱渡りをする分福茶釜
サランラップの芯で巻物、ネズミの嫁入り
屏風のように折りたためる一寸法師
古典の語りを加えた竹取物語
即興劇で桃太郎