記憶に残る折り紙の思い出(1)

折り紙は小さな子供の遊びのようなイメージがありますが、作る作品を選んだりやり方を工夫したりすると、国内外、年齢を問わず楽しむことができます。

そんな折り紙にちなんだ今でも記憶に残る思い出をいくつかご紹介します。

まずは国内での思い出。 ある時期松下国際財団の助成を受けて、出張して学校や団体のイベントで日本文化を英語で紹介する講座をやっていました。 その一つが近郊の女子高校。一人の先生が私の公開講座を受講し、担任するクラスでやって欲しいと要望され訪問したのです。

そこで2年生の生徒達に、折り紙と昔話を中心にした授業を行い、最後に全員から感想文をもらいました。 おおむね「楽しかった」といった内容が多かったのですが、一人の生徒のコメントだけは今でもはっきり覚えています。

担任から英語で折り紙や昔話をやってくれる先生が来る、と聞いた時は高校生の私達を馬鹿にしているのかと思った。 でも、英語で折り紙を折ったら、久しぶりにやる折り紙がとても新鮮に感じられた。そして、もしかしたら折り紙を教えながら世界を回るなどということもできるのかな、とふと楽しい夢が頭に浮かんだ」 

折り紙、昔話は子供のもの、という感覚が彼女にはあったのでしょうが、英語でやったら新鮮に感じられたのですね。 折り紙を伝えながら世界を回るというのは、現実にあり得ることなので、こうした思い付きのような夢から彼女の世界が広がっていくといいなあと私も強く感じたのです。

アメリカの小学校にて

松下財団の奨学金で日本の大学院に留学していた男子学生数十人を相手に、折り紙、茶道、古典の語りを交えた竹取物語を紹介したことがあります。その中の一人が「羽ばたく鶴」の折り紙作成を茶道や昔話よりも気に入って、母国に戻ったらみんなに教えたいと張り切っていました。大学院に学ぶ優秀な留学生が折り紙をそんなに喜んだのが私には意外で、これもはっきりと記憶に残っている光景です。

羽ばたく鶴 

折り紙が家族間の交流に役立ったとお礼を言われたケースもあります。 カルチャーセンターで連続講座を受け持っていた時でした。女性の受講生が遊べる折り紙作品を習って自宅で練習をしていると、帰宅した高校生の息子さんが興味を示してひとしきり折り紙を話題に花が咲いたと言うのです。 「近頃は息子と話すことも少ないので楽しかった」と嬉しそうでした。傍らで聞いていた女性も「私の夫もいいものをやっているね、と言ってくれた」と報告してくれました。折り紙は時に家族間の潤滑油的な働きをするのですね。こうした体験を重ねると、折り紙の楽しい活用法は探すといろいろありそうだと私には思えるのです。

おしゃべりさかな
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