米国の活動体験が転機となった人々

1992年に国際交流団体STEPを設立した私は、当初米国の小中学校で日本文化を紹介する親善大使を育成し、派遣する活動を始めました。 こうした活動で大事なのは、アメリカの受け入れ校と訪問する日本人のマッチング。学校には日本文化を学ぶ姿勢のあること、訪問する日本人には渡米前に英語力を高め、紹介する日本文化を準備する意欲があり、何より子供達と交流するのが好きであるのが望まれます。 このプログラムの参加年齢は、20歳から60歳で、申し込み時の英語力と紹介する内容にはかなりの幅がありました。英語検定1級やTOEICで900点越えの人もいれば、英検4級にも満たないのではと思われる人もいました。 茶道、日本舞踊、書道、の師範資格を所持している人はわずかにいらっしゃいましたが、紹介できるものは無いと不安を抱えた人が大半でした。

 そうした人々が月に一度、一堂に集まって実際に現地の学校で行う模擬事業のパフォーマンスをしたのです。その月例勉強会で配布する参考教案の作成、実演をすることが、何をどんなやり方で見せるのか、私が日本文化のパフォーマンスに関心を抱くきっかけになりました。

 事前研修を経て現地で1~6か月の活動した体験が人生の大きな転機になった方々もいます。

英語で子供達と交流したのが楽しかったと、帰国後北海道の地元で英語教室を開いた女性は、参加時期は英検2級で20代半ばでした。ご結婚後も子育てをしながらお教室を続けているうちに、数年後には生徒数が増えすぎてアシスタントを雇うほどになったと、今でも頂く賀状で報告してくれました。

 つい先日一冊の本が送られてきました。第二期生として3か月アメリカで活動された佐藤昌子(あきこ)さんからでした。佐藤さんは私と一緒に渡米した2回のグループツアーを含めると計4回親善大使プログラムに参加された方ですが、それ以外に親しくなったホストマザーと会う為に渡米し、ホストが関わっている学校や地域などでも日本文化紹介の活動をずっと続けていらしたのでした。コロナ禍で2020年から渡航ができなくなったので、自粛生活を活用してそれまでの活動記録を本にすることを思いついたそうでした。

「アメリカは私の第二の故郷」と題された彼女の本には1994年から2019年迄25年間の活動に加えて、現地の人々の交流や日常生活など楽しい写真が満載で、よくもここまで細かい記録を取り、沢山の写真を保存されていたと驚きました。プログラムに申し込まれた時の佐藤さんは52歳。子供の頃からアメリカ映画に憧れ、いつかは渡米したいと夢を抱きながらも実現できず、子育てが一段落したことで思い切って参加を決意したのでした。 佐藤さんの本を拝読しながら、当時のことが思い出されました。 佐藤さんの活動中、お母様が私を訪れ、「娘にはこうしたことをさせたかった」と涙を流して喜んでいらした光景は今でも目に浮かびます。本の中の佐藤さんの写真はどれも笑顔が満開で、毎年米国でご自身の活動を続けることがその後の佐藤さんの元気の基になっているのが分かります。 現在はご自身が設立したNPO法人で、生き生きシニアライフのアドバイザーをされているとのこと。この5月に82歳におなりですが、「親善大使プログラムに参加し、素晴らしい体験ができたことを感謝しております」と書かれた文面に、私は「親善大使プログラムをやって良かった」と心から思ったのでした。

佐藤昌子さん著「アメリカは私の第二の故郷」

頒布価格1,000円です。

お申込みは佐藤さんの所属するNPO法人「関東シニアライフアドバイザー協会」まで。

https://kanto-sla.com/about-us.html

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