知的な遊びー英語で俳句紹介

記憶に残る俳句講座

アメリカのデイケアでの俳句紹介は忘れられない思い出です。母の介護が終わって数か月後、気分を一新させる為に日本文化を紹介しながら 3 か月に渡りニューイングランド地方を回っていたのですが、コネチカット州のデイケアで 3 回講座 を受け持つことになりました。日本のデイケアのイメージと違い、そこは 1 人で 通ってこられる高齢者を対象にいろいろなカルチャー講座を用意していた施設でした。歳をとっても学びたいという知的好奇心が強い人達が対象なら、遊びが強い要素のものは避けた方が良いかと、私は 3 回の内容を1.茶道 2.折り紙+日本についていろいろ 3.俳句にしました。


それまで俳句を知っているアメリカ人には多く出会っていたので、デイケアの受講生でも俳句を知っている人はかなりいるだろうと想定していたのですが、「俳句 を知っていますか」という私の最初の問いかけに対し 10 数名の受講生全員から 「ノー」の返事が勢いよく返って来た時は愕然としました。どのようにしたら俳句に関心を持ってもらえるだろうか、瞬時に考え思いついたのが、日本語で五七五の音を朗々と吟ずることから始めることでした。日本語の五七五のリズムは古代より伝わる和歌でも感じるように、美しい特別な響きがあります。 翻訳英語は言わずに、それぞれの俳句を2 回ずつ繰り返しました。そうした導入で始めた俳句講座を終えた時、「あの音の響き、私とても好きだわ、もう一度聞かせて頂戴」 と一人の女性からリクエストを受けました。
後日、スーパーで「あなたの俳句を受講したのよ」と話しかけてきた女性がいて、 彼女はそのあと自分でも俳句作りに挑戦したそうでした。「私の俳句を聞いてね」 と声に出して披露してくれた詩は三行詩と呼ぶにはとても⻑すぎて、彼女自身も言い終えた時「ちょっと⻑すぎたかしら」と茶目っ気のある笑顔を見せました。 俳句は国籍、年代に関わらず多くの人達が興味を抱ける文化なのですね。
私が英語で俳句紹介の教案を考えたのはかなり以前になりますが、当時開催していたある公開講座の内容の一つが俳句であった時、受講生の中に地方から飛行機 で上京された大学の先生と数人の中学生が混じっていました。大学の先生と中学生が一緒に一緒に学ぶ習い事をそれまで考えたこともなかったので、俳句は幅広い年代、職業の人達が共に学ぶことができる素晴らしい日本文化なのだと私にと って大きな発見でした。

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